先生たちの推薦図書
葛城先生
①【タイトル】立ち上がれ日本人
【著者名】マハティール・モハマド(新潮新書)
【コメント】
90歳を過ぎて再びマレーシアの首相になったマハティールのかつてのスピーチを集めた本。修学旅行でマレーシアに来た都立国際高校の生徒達を訪問し、(見た目チャラい)彼らをして「こんなことを伝えてくれた大人はいなかった」と感涙させたというスピーチも出てくる。
②【タイトル】オール1の落ちこぼれ、教師になる
【著者名】宮本延春(角川文庫)
【コメント】
中学時代に内申がオール1だった筆者の体験談。九九もできないくらいなので高校へは行かずに働き始めた筆者だが、不幸なことに18歳までに両親ともなくなる。しかし、このあとの人間関係には素晴らしく恵まれる。その影響で20代で物理の魅力に目覚め、定時制高校に入学して猛勉強。数年後、超難関の名古屋大学に合格する・・・。とてもやさしい文章で書かれているので小学校高学年でも読めます。どんなに勉強が苦手な人でもこれを読めば勇気が出るはず。
③【タイトル】だれも知らない小さな国
【著者名】佐藤さとる(講談社文庫)
【コメント】
小さい人(コロボックル)たちと主人公との出会いと交流を描く。小5で初めて読んで以来、私にとってある意味バイブル。この本を読んでからというもの、中学生くらいまで、自分の周りにもコロボックルがいるはずだと本気で周囲を気にしていた。あの有川浩(現在「有川ひろ」に改名)も私と同様の体験を自著で書いている。シリーズものの1作目にあたり、3作目の「星から落ちた小さな人」もおすすめ。
④【タイトル】スローカーブを、もう一球
【著者名】山際淳司(角川文庫)
【コメント】
野球、ボート、ボクシング、スカッシュ、高飛びなどを題材にしたスポーツ・ノンフィクション短編集。超有名な『江夏の21球』も収録されているが、全く無名の選手を主人公にした『たった一人のオリンピック』も個人的には興味深かった。超難関高校出身だが受験では挫折した大学生が、ある日思い立ってオリンピックを目指す話。どうすれば短期間でオリンピック日本代表になれるか、持ち前の頭脳を使い全く経験のない競技を始め、本当に数年で日本代表まで上りつめるのだが・・・。
⑤【タイトル】木に学べ 法隆寺・薬師寺の美
【著者名】西岡常一(小学館文庫)
【コメント】
最後の宮大工(寺社専門の大工)棟梁ともいわれた筆者。はるか千年先をみすえて木を組み、塔を建てる。性質を見極め、それを最大限に活かす・・・これは木に向かう際のみならず人に向かう際の姿勢でもある。千数百年脈々と受け継がれた知識、教えに圧倒される。日本人ならぜひ読みたい本である。修学旅行に行く前に読んでおくと、実物を目の当たりにした時の感慨が違ってくるのでは。
⑥【タイトル】田宮模型の仕事
【著者名】田宮俊作(文春文庫)
【コメント】
世界が認める日本製品の中に、隠れ世界一のモノとして「プラモデル」がある。その業界の中でも圧倒的なトップがTAMIYA(田宮模型)だ。その理由がこの本の中に詰まっている。プラモデルとしての新製品開発のために、わざわざポルシェの新車を購入し即、解体。元に戻せなくなって専門の修理屋さんを呼んで怒られる話など秀逸のエピソードも満載。日本のメーカーの研究魂とモノづくりにかける情熱がヒシヒシと伝わってくる。
⑦【タイトル】名著講義
【著者名】藤原正彦(文春文庫)
【コメント】
数学者である筆者(西高出身です)のお茶の水女子大教授時代のゼミ授業を再現した本。毎回1冊の本をテーマに授業は進む。テーマに上るそれぞれの本自体にも注目だが、それらの本を通した筆者と学生とのやりとりが実に素晴らしいし、感動的でさえある。
⑧【タイトル】流れ星は生きている
【著者名】藤原てい(中公文庫)
【コメント】
戦後の大ベストセラーであり、現在まで続くロングセラー。筆者は上記藤原正彦の母であり、有名作家新田次郎の妻でもある。敗戦直後、満州から幼い3人の子を連れて日本に引き揚げるまでの壮絶な実話。藤原正彦が生きて立派な学者にまでなったのが奇跡に思えてくる。かつてこのような体験をした人たちがいてくれたおかげで、今私たちが生きているのだと知るのによい機会になる。
北田先生
①【タイトル】博士の愛した数式
【著者名】小川洋子
【コメント】
記憶が80分しかもたない元数学者と、その家政婦としてやってきた「私」とその息子「ルート」の交流を描く感動作。ページ数も少なく読みやすい。数学が身近でキラキラしたものに見えてくるかも。
②【タイトル】はなとゆめ
【著者名】沖方丁
【コメント】
清少納言の語る宮中ロマンス。平安時代の時代のみやびな文化が違和感なくすっと入ってきて親しみが持てるはず。
③【タイトル】パラサイト・イヴ
【著者名】瀬名秀明
【コメント】
同名のゲーム原作。あなたが日々使うエネルギーは、細胞の中にいるミトコンドリアが生み出している。人とは別の遺伝子を持っていることから元々は別の生物で、共生することになったという説がある。そのミトコンドリアが反乱を起こしたら、という本格的バイオホラー小説。
神田先生
①【タイトル】『華氏451度』
【著者名】レイ・ブラッドベリ著、伊藤典夫訳
【コメント】
僕が中学生の頃、テスト期間になると、たびたび親から読書禁止令を出されました。それでも読むのですが。読書を現実逃避だと言っている人は、何を以て現実を、そこに生きる自分を、捉える目を養うのでしょうか?
②【タイトル】『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
【著者名】加藤陽子
【コメント】
タイトルと厚みに怯むかもしれませんが、中高生向けに書かれた本なので中身は読みやすいと思います。4つの戦争を軸に日本近現代史を読み解く、この時代を理解するのに恰好の本です。
③【タイトル】『人間に向いてない』
【著者名】黒澤いづみ
【コメント】
タイトルに惹かれた人は読んでください。それ以上言うことは無い。
④【タイトル】『ユークリッドの窓』
【著者名】レナード・ムロディナウ著、青木薫訳
【コメント】
中学1年の夏に買った本。僕の物理学好きの原点です。全章漏れなく笑えて学びになる、文理問わずお薦めの一冊。
⑤【タイトル】『花咲家の怪』
【著者名】村山早紀
【コメント】
日常に潜む小さな魔法を描く作家としては随一だと思っています。『コンビニたそがれ堂』が有名ですが、敢えてこちらを。少し不気味で、それでいて優しさに溢れた短編集。
⑥【タイトル】『西の魔女が死んだ』
【著者名】梨木香歩
【コメント】
中1の夏に買った本その2。「善く生きる」という2400年ほども前に説かれた指針を実行するだけのことに、今も難儀する我々ではありますが、しかしそれだけ価値のあることでもあるのだろうと思います。
田中先生
①【タイトル】『自助論』
【著者名】S.スマイルズ著、竹内均訳
【コメント】
著者は19世紀のイギリスを生き、「天は自ら助くる者を助く」という格言で始まるこの作品を通して歴史上から数多くの人物とエピソードを挙げ、明治時代の日本にも大きな影響を与えました。語りつくせぬ歴史から学び、21世紀を自由かつ大胆に生き、幸せを勝ち取るための知恵がつまった、不朽の名著です。
あわせて、同じ著者の『向上心』から次の言葉を紹介します。「学問も富も誠実さにはかなわない。知的教養は、人格の純粋さや立派さなどには必ずしも関係がない。財布の中にある金を与えても、心の中の親切はしまい込んでおく人がいる。」どちらの作品も平易な文体で書かれていて、国語の読解力向上にはつながらないかもしれませんが、勉強の合間にぜひ手に取ってみてください。
石田先生
①【タイトル】ジニのパズル
【著者名】チェ・シル
【コメント】
朝鮮語を話せない在日韓国人の主人公ジニは、転校先の朝鮮学校での北朝鮮式の生活や習慣に不満を抱き、一人で革命を起こす物語。差別について深く考えさせられる自伝的小説。
②【タイトル】未成年
【著者名】イアン・マキューアン
【コメント】
日本でも憲法問題になったエホバの証人の輸血拒否事件のイギリス版。人を救うのは信仰か医療か、これに向き合う女性裁判官と少年とのやり取りや葛藤を通じて深く考えさせられる小説。
③【タイトル】私とは何か
【著者名】平野啓一郎
【コメント】
個人の持つ、時と場合によって変化する人格それぞれを“分人”と定義し、分人を用いて私とは何かを考える新書。
④【タイトル】長嶋少年
【著者名】ねじめ正一
【コメント】
長嶋茂雄にあこがれる少年が、自身に降りかかる様々な困難や試練に対して、スーパースター長嶋茂雄を心の支えに乗り越えていく成長物語。野球少年必読。
⑤【タイトル】スリ
【著者名】中村文則
【コメント】
面白い。
端山先生
①【タイトル】FACTFULNESS
【著者名】
【コメント】
事実に基づく考察で思い込みを打破しよう。
②【タイトル】夜行
【著者名】
【コメント】
普通におもしろいです。
③【タイトル】春にして君を離れ
【著者名】
【コメント】
幸せとは何か、考えさせられる小説です。
若杉先生
<テーマ1>
身の回りにある物や人が自分にどれほど影響しているか考えさせられる本
①【タイトル】世界から猫が消えたなら
【著者名】川村元気
【コメント】
余命幾ばくもない主人公が、「この世界から何かを消す。その代わりにあなたは1日だけ命を得る」という奇妙な取引を持ちかけられ、言葉通り身の回りのモノを世界から消していく。それによってどう世界が変容してしまうのかを描いた作品です。
②【タイトル】アイネクライネナハトムジーク
【著者名】伊坂幸太郎
【コメント】
ひょんなことから出会った誰かとの関わりが、いつかどこかで人生を変えてくれる。出会いのかけがえのなさを学べる作品です。
<テーマ2>
受験生向けに、受験勉強のモチベーションを上げてくれる本
③【タイトル】下剋上受験
【著者名】桜井信一
【コメント】
中卒の両親のもとに生まれた一人娘。そんな中で塾に通うことなく父と娘が二人三脚で最難関私立の桜蔭学園を目指すノンフィクション。
死に物狂いで努力して高い目標を見据える意味、夢破れてもその努力は無駄にならないこと等をありありと照らし出した作品です。(個人的に受験生に一番読んで欲しい本です。)
④【タイトル】ビリギャル
【著者名】坪田信貴
【コメント】
普通に面白かったです。
小路先生
①【タイトル】なめとこ山の熊
【著者名】宮沢賢治
【コメント】
賢治が生き、夢見たイーハトーブ(岩手)を舞台にした話。熊を殺して皮を売る猟師とそれを買う商人、そして熊の3すくみの構図の単純な小説です。
とても短く全学年にお勧めできますが、私が中学3年生の時に「卒論」として自分自身が選んだ作品でもあります。
特にやる気がある方は簡単な考察を添えていただけましたらコメントをお返しします。
(感想は作家論とテキスト論のどちらかで書いて下さい。その両者の説明はこちらのページがわかりやすいです。
ちなみに私は中3の時は作家論を使って考察しました。ご希望の方には拙い文章ですが参考までにお見せします。)
②【タイトル】子どもたちは夜と遊ぶ
【著者名】辻村深月
【コメント】
主人公の兄である「i (藍)」に会うために主人公はゲームを続けていく。
すれ違う恋愛模様や殺人の中で疲弊していく精神的描写はチープなサブカル映画のようですが、結末はもっと単純な読後感を与えてくれる素晴らしい作品です。
同じく中学生の頃、私がお気に入りだった作品です。
③【タイトル】金閣寺
【著者名】三島由紀夫
【コメント】
私が小学5年の時に読み、衝撃を覚え今なお愛してやまない作品です。
これは実際に起きた「金閣寺放火事件」をテーマにした作品で、吃音症の主人公と、そこで出会う人間たちの「ぬかるみを歩くような」人生とその結末を描いたものですが、物語において重要なのは別の部分にあり、全くストーリーの進行とは関係のないところで細やかに描写される退廃美そのものです。退廃芸術といえば第二次世界大戦時、ナチスが禁止した、という認識が強い方も多いと思いますが現代日本の世相であったりそこに息づく我々の美意識というものに必ず影響を与えてくれる作品だと思います。
井坂先生
<小学生や、読書の習慣がない中学生向け>
①【タイトル】THE MANZAI
【著者名】あさのあつこ
【コメント】
中学生男子二人が、文化祭で漫才をやろうと仲間とドタバタする物語。普段皆さんが日常生活でもつ微妙な感情の揺らぎを、上手に言語化してくれています。テスト等で、小説の登場人物の心理描写が読み取れない!という人におすすめです。
②【タイトル】エヌ氏の遊園地
【著者名】星新一
【コメント】
ごく短い短編小説の詰め合わせです。世の中を皮肉的に捉えたブラックジョークが、モノの見方をより幅広くしてくれます。長い文章が苦手な人が、読書のハードルを下げるのにも役立ちます。
<骨のある文章に挑戦したい人向け>
③【タイトル】虞美人草
【著者名】夏目漱石
【コメント】
近代の文章に触れてみてください。登場人物同士の関係性やそれぞれの持つ価値観を正確に理解するには時間がかかるかもしれませんが、後半に差し掛かると物語が非常にスピーディーに動いていきます。ちなみに、結末がなぜこうなったのか、と理由は何通りにも解釈できるので、皆さんなりの答えを聞かせてください。